名曲「出船」の作詞者 勝田香月(本名穂策)は明治32年3月静岡県沼津市本町に生まれた。その後、幼い時に、現在の富士宮市大宮町に移った。
香月の稚号は、師事した詩人 生田春月の『月』と沼津の香貫山の『香』から名づけられたという。『出船』は香月満18歳の時、石川啄木を慕い北国に憧れ、北海道から秋田へ廻り大館から十和田湖行く途中の大滝温泉で作られた。『出船』に描かれている哀愁は、港で日頃から出船を見てきたものでなければとらえられないものを感じさせる。香月は粉雪が舞う小樽港と秋田県能代港での見聞をヒントにしたと言うか、幼少時の沼津で見た出船の残像が底にあったのであろう。

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大正11年に出した第3詩集「心のほころび」の巻頭に掲げられ、同年懇意だった作曲家の杉山長谷夫が曲をつけ、声楽家藤原義江がレコードに吹き込み大ヒットした。当時の世相を反映した物悲しい曲想が大衆の心を捉え全国に流れた。これにより香月の作詞家としての評価は高まり、以後多くの歌曲を作詞している。