本居長世は童謡という日本の文化財を人に先駆けて製作した先覚者である。大正9年秋、彼が野口雨情の作詞した「十五夜お月さん」に付けた曲は子供たちの間に親しかったわらべ歌の音階・旋律をもとにして作ったもので、それまでの文部省唱歌のみを歌っていた子供たちに本当の日本の子供の歌を教えた記念すべき作品であった。

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本居は静岡県沼津の地を愛し、毎夏家族と共に滞在して町の人と親しみ、作曲にいそしんだが、ここに掲げる西条八十作詞の「残り花火」は当時の夏の沼津の浜の風景を写して遺憾なく、本居の作曲はまた夏の沼津を慕い、懐かしむ子供の心情を表現しおおせて完璧の出来である。  〈金田一春彦〉