谷山家は、和歌山県塩津の浜に建てられていた漁家である。近世の紀州における海運業の要地であった塩津で代々海運と漁業を営んできた。
現在の建物は棟札によって寛延2年(1749)に上棟されたことがわかる。

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建物は主屋と倉が直角に接続しているが、倉の材料は主屋よりやや古いと見られるので、寛延2年には主屋だけで建て替えられて、それまであった倉に接続されたと考えられる。
主屋は敷地にあわせて楯に長い台形の平面をしており、全体に居室が少なく、ほとんど吹き抜けの土間になっている。また、通りに面した正面に出入口を設けず、二階の窓に三重の戸が用いられたのは、海からの強風に耐えられる配慮である。

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この建物は建築年代が明らかな上、漁家として古いものに属し、全国的にも数少ない貴重な民家である。和歌山県では、この家の所有者より譲り受け、昭和44年に紀伊風土記の丘に移築し復原修理を行った。