九頭竜川の河口に位置する坂井市三国町は、古来より越前の玄関口ともいうべき経済の要港として発達してきました。 その三国湊にあって中世以来、湊の発展を支えてきたのが、北前船による廻船業を生業とした豪商たちで、その中のひとつが森田家です。

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明治時代になり廻船業の衰退を察知した森田三郎右衛門は、1894年(明治27年)に森田銀行を創業し、業種転換を図りました。森田銀行は確かな信用のもと、県内上位の優良な銀行に成長します。そして、1920年(大正9年)この建物が新しい本店として落成しました。
外観は西欧の古典主義的なデザイン、内部は豪華な漆喰模様があります。細部のデザインや技術へのこだわりは建築思想の質の高さの表れであり、県内に現存する鉄筋コンクリート造の最古のものです。設計技師は横浜市開港記念会館や長崎県庁も手がけた山田七五郎氏。大工棟梁は地元の四折豊氏です。

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森田銀行はその後、福井銀行と合併し、近年まで福井銀行三国支店として営業されていました。1994年(平成6年)坂井市(旧三国町)の財産となり、詳細な調査を踏まえて復元保存工事を行い、平成11年7月より一般公開しました。坂井市は、この建物を三国湊繁栄をしのぶ大切な文化遺産として保存に努め活用を図るものです。なお、この建物は平成9年12月に文化庁の登録有形文化財に指定されています。