【ふぢばかま】

     萩の花
     尾花葛花 なでしこの花
     をみなへし
     また藤袴 あさがほの花

「フジバカマ」は、川の土手などに生えるキク科の多年草で秋の七種の一つとして親しまれているが本当の姿を知る人は少ないようで希少な植物となっている。
キク科の植物の花はその一片一片が一つの花で、それぞれにオシベとメシベを持ち一匹の虫で沢山の花がいっときに花粉のやりとりができる。無駄なく結実するこのような花を高等植物といい、フジバカマは花の王者とも言える。

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秋に茎の先に淡い紅紫色(藤色)の筒状花を多数つけるがその形が袴に似ているので藤袴と名付けられたという。
葉が黄色くなり生乾きになった頃に、桜餅のような甘い佳香があり、これは桜の葉と同じクマリン誘導体の芳香で、中国では「香草」「香水蘭」「蘭草」などと呼ばれ身に付けたり浴湯や洗髪に用いたという。

【しだくさ】

     わが屋戸の
     軒のしだくさ 生ひたれど
     恋忘草 見れど生ひなく

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「しだくさ」は羊歯(しだ)植物の一種と考えられており「甍しだ草」又「軒のしだ草」と歌中に詠まれている。軒の下に生えることが名の由来になって「軒忍」が定説となっているが他説に下草と読み裏白とする説もある。
「軒忍」は屋根や古い家の軒・木の幹や岩などに生える常緑着生シダ植物の多年草で、葉は20センチ程でヤナギのように細長く緑裏面は淡い白褐色で花は咲かない。葉の裏に並ぶ胞子が目玉のようで数多いことから「八つ目蘭」また「「松の風蘭」とも呼ばれている。

【かつら】

     向つ岡(を)の
     若かつらの木 下枝(しづえ)取り
     花待つい間に 嘆きつるかも

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「桂」は日本特産で各地の山地に自生し30メートル以上にもなる雌雄異株の落葉高木である。
雌株のめしべ、雄株のやくは共に紅色で、春、葉が出る前に花弁のない紅色の小花が咲く。主幹の周りに数本の幹が並び立ち、根元から小枝が茂る独特の姿を持つ。材質はきめが細かく、建築用材や楽器・家具に用いる。