【むらさき】

     託馬野(つくまの)に
     生ふるむらさき 衣(きぬ)に染め
     いまだ着ずして 色に出でにけり

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「ムラサキ」は日当たりの良い草地に自生する高さ50センチ程の多年草である。昔は武蔵野や蒲生野などの各地に自生し栽培されていたが、現在、野生種は日本中に1000株ほどと言われている。

「紫草」は茎や葉などの全体に細かな粗毛があり6〜7月頃に5弁の白い花が咲く、古代、紫草は貴族が着用する紫の衣服の染色に使われており、太い根を乾燥させると赤味を帯びた紫色になり「紫根染め」の重要な染料として使われ名前はこれに由来する。

【はなかつみ】

     をみなへし
     咲く沢に生ふる 花かつみ
     かつても知らぬ 恋もするかも

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「はなかつみ」は古来から難解植物とされており、「真菰」「姫シャガ」「葦」「野花菖蒲」「赤沼あやめ」等の説がある。
「姫シャガ」は低い山地の林の下に自生する多年草で、葉は剣形で先がとがっており、一般的に知られている著莪より全体に小型である。

著莪の葉は丈が50センチ前後の常緑で肉厚があり花は白紫色で艶やかである。
対して、姫シャガは葉の丈が20センチ前後で薄くて柔らかく、冬場は枯れて姿を消し花はあやめに似た淡紫色である。

【わらび】

     石ばしる
     垂水の上の さわらびの
     萌え出づる春に なりにけるかも

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「蕨」は全国の山野に自生する多年草生の大型シダ植物で比較的明るい場所を好み早春に拳のように巻いた若葉を出す。若葉はやがてほどけるように開いて羽のように広がり青々と茂り早蕨と呼ばれて古くから春の代表的な山菜で食用とされる。
根茎からとった澱粉は糊や蕨餅の原料になる。