昭和30年代は「くろがね」という角ハンドルの自動車が走っていた。
我が家の納屋には125ccか250ccか解らないが車体の大きいオートバイがあった。

中学生になっていた私は毎夜このオートバイを乗り回した。
納屋の敷居は高い。
音を出さないように力を振り絞って敷居を越え、家から離れてからエンジンをかける。

まだアスファルトの道はなかった。
人家も少なく、人や車に会うことはなかった。
冬もそう寒いとは思わず夏は風を受けると気持ちがよかった。
しかしながら、
坂の途中になると停まってしまう。
減速を知らなかった。

そして、何事もなかったかのようにオートバイは納屋に座るのである。
たぶん家人にばれることはなかったと思っている。