あの頃の隣の住人は小学校教諭をしている若夫婦だった。
親しくなって大台ヶ原へあまご釣りに出かけた。

寝ないで走り、山道を歩き桃の木小屋あたりから釣り上がった。
帰りだった。
川沿いから道は左に上っている。

ふと上を見ると道に真新しいウグイスの籠にメジロが2匹入っているではないか。
私はもう一度見直した。


ない。

どういう訳か先ほど見たウグイスの籠がないのである。

ないものがあるように見える。
幻覚であった。

左に上っている道が真っ直ぐに見えたら、谷底に落ちて命を落とす。
おもいきり目が覚めた。