-




                                                                              一番よい席が空いていた。
  -



周囲を湖に囲まれ、浮城とも呼ばれる忍城、領主・成田氏一門の成田長親は、領民から「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼び親しまれる人物であった。

石田三成率いる二万の軍勢に、農民らを含めても三千の成田勢。総大将たる長親は、将に求められる智も仁も勇もない、その名の通りでくのぼうのような男、だがこの男にはただ一つの才能、異常なほど民からの「人気」があった。 小田原城落城までもちこたえた支城は忍城だけだった。

春秋左氏伝に
「安きに居りて危うきを思う。思えば則ち備えあり、備えあれば患いなし」とある。

長親は、ここまで考えていたとは思えないが武士は500名、農民の力がなければ早くに落ちていただろう。