−紫の名高の浦の名告藻の
               磯に靡かむ時待つ我を−

「名高の浦の名告藻(ホンダワラ)が磯になびくように、あなたが私になびくようになる時期を待っているのです」と、恋人が自分になびく時を期待している歌。

(紫は名高の浦の枕詞になっていることについて高貴な色・紫川・紫石など諸説がある。)

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         「紫の名高の浦のなびき藻の
               こころは妹によりにしものを」

名高の浦のなびき藻のように、私の心はすっかりあなたになびき寄ってしまったことよ


         「紀の海の名高の浦に寄する波
              音高きかも逢はぬ子ゆゑに」

紀伊の海の名高の浦に寄せる波のように噂が高いことだなぁ 逢いもしないあの娘のためにさサ 南の藤白山と北の船尾山とに囲まれたひっそりした黒江湾のことを思えば湾の奥の方にある名高の浦では波音が湾内に反響してまさしく波音が高かったであろう