雨、雨、雨、
人里はなれた山奥の、原生林に覆われた源流近くに大粒の雨が降る。

大台ヶ原

シマミミズ刺した針を岩陰から投入すると、竿を引ったくらんばかりの当たりがある。
綺麗なパーマークに朱点があざやかな丸々と太った雨の魚が姿を現す。
気温とともに水温が上がった時期は、笹にごりの渓流はまたとない瞬間が始まる。

仕掛けを投入し当たりを待つ瞬間があまご釣りの醍醐味だ。



大粒の雨が川面を叩くような条件の下では、あまごは人の進入を察知できないし餌を探すのに熱中しているのだろうか、何のためらいもなくくわえる。
天然の雨の魚は釣って良し食べて良し、放流漁とは全てが違う。
熊笹をひいた魚籠に丁寧に入れる。

雨の日は、大木の枝から山蛭が降ってくる、それも中途半端な数じゃない。
大きい雨の魚は胃袋に山蛭が入っていることが多い。
足下の石や岩も滑りやすい。
めったに人が来ないような源流は無理は絶対に禁物だ。

それにしても、雨が降ればよく釣れる。
よく釣れるからといって注意を怠れば命も落としかねない。

大雨、時雨、五月雨、霧雨、地雨、村雨、甘雨、瑞雨、霖雨、こぬか雨、虎が雨、通り雨、長雨、にわか雨、凍雨、春雨、慈雨、氷雨、微雨、寒九の雨、暴雨、並雨、白雨、小雨、秋雨、驟雨、豪雨、怪雨、しのつく雨、強雨、緑雨、麦雨、天気雨、涙雨、細雨、そぼふる雨、酒涙雨、育花雨、青時雨など、ほかにも聞いたことのない雨がたくさんあるのだろう。

特には思わないが、【しのつく雨】はフランス語ではどう訳すのだろう。